INTERVIEW 自己表現ツールとしてのケータイ 中村大輔
CONTENTS
1.D505iSのコンセプトとカメラ機能
2.iモードとメール文化のインパクト
3.ケータイにとって必要な日本語
1.D505iSのコンセプトとカメラ機能
D505iS
ATOK.com:
ついにムーバ505iSシリーズが発表になり、一番乗りのD505iSは200万画素(※1)のカメラが搭載されましたね。
中村:
はい。三菱電機はD505iで「ヨコ撮り」というデジタルカメラ風の撮影スタイルでカメラ付きケータイ の新しい使い方を提案しましたが、D505iSではその完成度をさらに高め、より多くのユーザーさんに納 得して使って頂くために、「L判にプリントしても美しい写真画質」と「楽しくカンタンに撮れる操作系」 を大きなテーマに据えて、商品企画・開発をしました。
ATOK.com:
D505iSのカメラ機能はどんなところがD505iから変わったのでしょうか?
中村:
そうですね、主な変更点は以下でしょうか。
1.ケータイで「写真画質」
200万画素記録にスペックアップした「スーパーCCDハニカム」の実力を最大限に引き出すため、富士写真光機さんの「FUJINONレンズ」や三菱電機の高速画像処理エンジン「COLORIX(カラリックス)」といった、デジタルカメラメーカーにも採用されている技術を搭載し、ケータイで撮ったとは思えないような色鮮やかで高精細な「写真画質」を実現しました。
2.直感的に倍率が決められる
ズームは「2×」「4×」などの固定倍率での切替ではなく、デジタルカメラのようになめらかに倍率を細かく調整できる「20倍デジタルリニアズーム」になりましたので、構図の中に、思い通りのサイズで被写体を収めることができます。
3.最適な撮影モードを簡単設定
初心者のユーザでもプロの手を借りたかのような写真を簡単に撮影できるように、被写体・場所・時間帯に合わせた、22種類の撮影モードを準備しました。「ペット」「逆光補正」「トワイライト」「サーフ&スノー」などの撮影モードを、サンプルイメージ写真と説明文を見ながら選べますので、詳しい知識がなくても、カメラの設定をそのシーンに合わせた最適値に調整できちゃうんです。
ATOK.com:
もう、デジタルカメラですね。
中村:
多くのユーザのホンネは、「デジタルカメラを毎日持ち歩くのは大変だけど、ケータイなら必然的に毎日持ち歩いている。だから、日常的なスナップくらいはケータイのカメラで満足できる画質で撮りたい。」といったような感じだと思うんです。
そういうニーズを想定して、D505iSのカメラ機能は、「これさえあれば、撮りたい時にいつでも気軽に、楽しくキレイに撮れるね!」と言ってもらえるように開発しました。
「いつでも気軽に」は、D505iの時にケータイを閉じたまま相手・風景撮りができる「ヨコ撮り」で実現できましたので、D505iSでは新たに「楽しくキレイに」の要素を付け加えた、という感じですね。
ATOK.com:
デジタルカメラと全く同じ性能のカメラを携帯電話にのせることは容易ではないですよね。
中村:
ケータイのカメラ性能は今後も向上すると思いますが、画質面などで、同時期に発売される本格的なデジタルカメラに勝つことは難しいです。それよりも、ユーザがカメラ付きケータイに求めているものを形にしたいです。

銀塩カメラ時代に、レンズ付きフィルム(使い捨てカメラ)が果たした役割を、デジタルカメラ時代には、カメラ付きケータイが果たすべきだと思っています。だから、プロが唸るような超高画質ではないけれど、いつでも持ち歩けて、誰もが手軽に楽しく撮影できてて、簡単な操作で写真を面白くレタッチしたり、ワンタッチでメール送信もできちゃうような「機動性」と「楽しさ」をもっと重視して商品企画をして行きたいです。メール機能についても同じです。パソコン用メールソフトのような高性能ではなく、「すぐに読みたい」「早く返事を書きたい」「面白い表現でキモチを伝えたい」という独自の方向性にケータイは進化しています。

両方に共通しているのは、ユーザが「手軽な自己表現ツール」としてケータイを利用している点だと思います。自分が見たこと、感じたことを自分オリジナルの感性と表現手法で、リアルかつライブに伝える手段がケータイなんですね。写真も教科書どおりに撮るのではなく、街にある変な看板を見つけて撮ったり、カフェでケーキを撮ったり、飲み会で変な顔をして友達と一緒に自分を撮ったりしますし、恋人同士のメールは他人から見たらほとんど暗号のような言葉遣いや記号で埋めつくされています。D505iS搭載の「大画面自分撮り機能(※2)」や撮影モードの「グルメ」「ペット」「モノトーン(赤/緑/青)」、それに文字入力時に使える「絵文字/顔文字ボタン」のような機能は、結果的にはメーカーの商品企画担当者が出したアイデアであっても、ある意味ではユーザーがそのヒントをくれたんだと思っています。
※1カメラ有効画素数100万画素、記録画素数200万画素
※2D505iSでは、ヨコ撮りと同じ記録200万画素カメラで、高精細なQVGA(240×320ドット)メイン液晶を見ながら自分撮りができる「SPINEYE(スピンアイ)」機構を採用。
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2.iモードとメール文化のインパクト
ATOK.com:
携帯電話に関わるきっかけは何だったのでしょうか?
中村:
入社前には、「コンシューマー向けの商品企画をやりたい」という希望を出していましたが、そう簡単に希望がとおるわけもないと思っていました。でも、ほぼ希望どおりの部署に配属されたんですよ。
ATOK.com:
職業病みたいなものはありますか?
中村:
街中でどうしても人が使っている携帯電話に目がいってしまいます。メールを打っている手からはみ出しているわずかな部分を見ただけで、どこのメーカーのどの機種かがわかってしまう自分に気付いたとき、「こりゃ病気だな」と思っちゃいます。
ATOK.com:
はじめて企画に関わられたのはどの機種なんでしょうか?
中村:
ちょうど「iモード」を初めて搭載した「D501i」なんです。ご存知のとおり、このシリーズをきっかけに、ケータイはあっという間に「ネット端末」「メール端末」へと進化し始めたんです。特に「メール」のブレイクは、日本人のコミュニケーション文化を根本的に変えてしまうほどの大事件だったと思います。
ATOK.com:
ケータイATOKが開発されるきっかけでもありますね。
中村:
いつでもどこでも文字メールを送りあえるようになったのはよかったのですが、当時、ケータイの日本語変換機能は未成熟でした。特に「口語体」に大きな弱点であるというのが判明しました。「何をしていますか?」は変換できても、「何してるの?」が変換できないようじゃケータイとしてはダメだ、と思いました。そこで、白羽の矢を立てたのがATOKです。
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3.ケータイにとって必要な日本語
ATOK.com:
ケータイATOKを最初に搭載した製品はどれですか?
中村:
ATOK Pocketを搭載した「D503i」でしたね。三菱電機のテレビCMで、従来機種では「鯖威張る中」「痛め塩後って」なのに、ATOKならちゃんと 「サバイバル中」「イタ飯おごって」と変換できる様子をコミカルに描いた機種です。それ以来、ケータイATOKはユーザがメールでよく使う「普段着の日本語」をストレスなく変換できる日本語入力の代名詞的存在になっていますよ。 D503i発売から2年半以上が経っていますが、この短い間でも流行語や若者の言葉遣いが随分と変わってきています。そういうのに細かく対応して進化していくATOKは、ユーザにとってもほんとうにありがたい存在だと思います。 今回のD505iSの関西弁変換は、関西人ユーザーの方がむしろ「日本語変換ってのはどうせ東京弁だけが変換できるように作られとるんやろ」とあきらめていたところに登場したわけですから、今年はご機嫌な関西人が、さらに大喜びだと思いますよ。

変換できる関西弁一覧
ATOK.com:
いろいろとお話しを聞かせていただき、ありがとうございました。最後に中村さんが描く携帯電話の未来像を教えてください。
中村:
デジタルカメラ・デジタルビデオ・携帯ゲーム機・テレビ/ラジオなどのエンターテインメント機能を取り込んだ意欲的な機種が今後もどんどん登場していくと思います。 また、iモードで「インターネット」につながったケータイは、これから様々な手段で「リアルな世界」とつながり、ICカードや電子マネーとしての役割も果たすようになるでしょう。 でも、新機能を単純にケータイに付け加えるだけでは、ユーザからその価値を認められないでしょう。

商品企画をする人間としての使命は、新機能が加わるときに、「その機能がケータイにのったからこそ実現できた新しい使い方」を仕掛けて提案することだと思っています。 携帯電話だけが持っている「常時携帯性・機動性・接続性」を200%活かせれば、新しい機能は単なる「オマケ機能」ではなく、ケータイ自身のデザインを全面的に変えて、さらには毎日の生活スタイルを根本的に変えてしまう可能性を持っていると思います。 多くの人に愛されて、絶対に手放せない生活必需品となるくらいのケータイの新たな「ムーブメント」を起こしてみたい、というのが自分自身にとっても大きな夢ですね。みなさんにも楽しみにしてほしいです。
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※1「ムーバ」「iモード」はNTTドコモの登録商標です。
※2「スーパーCCDハニカム」「FUJINON」は富士写真フイルム株式会社の登録商標です。
※3「SPINEYE」「COLORIX」は、三菱電機株式会社の出願中の商標です。
※4「ATOK」は株式会社ジャストシステムの登録商標です。


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update:2005.10.20