『医療辞書』や『くすり55検索』など、医療現場では欠かせないソフトを開発していらっしゃいますが、もととなる最新医療情報はどうやって手に入れていらっしゃるのでしょうか。
弊社のおもな仕事のひとつが、薬のデータベース化です。国の許可が下りた新薬や一部変更された薬の情報を、製薬会社などから直接入手して、そのデータを入力するという作業を日々繰り返しています。この薬のデータ入力の際に、必要に駆られて辞書登録をしていました。これらの用語は別に活用できるんじゃないかと思って作り始めたのが『医療辞書』です。
現在は、『医療辞書』は独自に、新しい用語や病名、その略語、フルスペル、日本語名などを調べ、登録する作業を週に一度は行っています。
それらの情報は定期的に発表されるのでしょうか。
いえ、とくに決まったスケジュールはないので、いつも目を光らせています。薬の場合は年に700くらいの入れ替わりがあって、新薬が発売されたり、古い薬が製造されなくなったりするので、毎日のチェックが欠かせません。また医学関係の学会は世界中で開かれていますから、インターネットを中心に 情報収集しています。基本的な情報を網羅していないと辞書としての役目が果たせませんから、気を使う部分ですね。
そうした情報に加えて、医療現場からの声も反映していますか。
しています。現場の声は重要ですね。全国の5,000ほどの病院や調剤薬局とネットワークがつながっていますので、たとえば調剤薬局から、この薬はこういう作用もある、などの声がダイレクトに入ってきます。そうした意見は、こちらの編集方針にのっとって、活用をしています。そうやって日々鍛えられていますから、紙媒体の辞書 とは違った信頼性があると思います。
たとえば、お客さまからの声で改善した点はありますか。
特殊変換辞書のひとつで「薬品商品名・一般名の双方向変換」がありますが、はじめは商品名→一般名の一方通行だったのですが、お客さまから逆方向の変換もできたほうが使い道が多いと言われて、翌年には双方向変換にしました。ジェネリック薬品が増えてきていることもあって、一般名(成分名)から検索する機会が増えたのだと思います。
その特殊変換辞書のひとつとして、今回「識別コード辞書」が加わりましたね。
どのように使うものでしょうか。
薬自体に刻印されている識別コードを入力すると、薬品名が出てくるという機能です。またコメント欄にはその薬の色や形、販売会社名が出てきますから、薬を特定しやすいと思います。患者さんが持ってきた薬が何かを調べるときなどに、役立つのではないでしょうか。
以前のインタビューでご要望のあった機能を実装しました。
おすすめの活用方法があれば、ぜひ教えてください。
「略語→正式名称へ変換」というのがアピールしたい機能です。
「@」→「英数大文字の略語」を入れると、日本語、英語のフルスペルが出てくるというもので、これはいちいち調べる手間が減ると思います。
変換もできて情報も得られるという夢のようなツールですが、今後、進化させていきたい部分はありますか。
ATOK上で使用することで、パソコンを立ち上げただけで、すぐにカルテやレポートが書けるような、それだけで事足りるものを目指しています。
参考情報が引き出せる特殊変換辞書の機能にも力を入れているわけですが、かと言って[スペースキー]での変換のときに全ての候補が出てきては、情報が多すぎる。ATOKの場合は[スペースキー]と[F5]キーを使い分けることで得られる情報の切り分けができるので、これからもどんどん進化する要素があると思います。
また、辞書の説明のひとつとしてぜひ画像を取り入れたいですね。たとえば「識別コード辞書」に薬の画像がひとつあれば、より確定しやすくなると思います。また、ICD10変換辞書は、保健行政の統計にとても重要だと考えています。病院ごとに病名の表現が違っていれば、正しい統計はとれませんから。
これからも医療現場の「いま」を取り入れた辞書作りに期待しています。
本日はありがとうございました。