本部長 |
「まず『商品不足の事態』だが、これは『フソクの事態』の使い方が間違っとる。ウスイ主任、わかるだろ?」 |
ウスイ |
「予想できないことが起こることで、ソクは足ではなくて、観測の『測』です」 |
本部長 |
「そうだ。これだと『商品不足』と『不測の事態』が合体してる。『不足』を防ぎたいのか、『不測の事態』に対処したいのか、さっぱりわからん」 |
ねね |
「でもホンブチョー、この『商品不足の事態』=『商品が足りないこと』を指しているのだから、間違っていないようなー」 |
本部長 |
「(ニヤリ)その通りだが、言葉としてわかりやすいか考えてみたか? この場合はどうすればいいと思う?」 |
ねね |
「……」 |
本部長 |
「わざわざ難しく書くからややこしくなる。『商品不足にならないように』でわかるだろう。『事態』がなくても意味は通じる」 |
ねね |
「(えっそーゆー答えなの? と思いつつ)そっ、そうデスね…」 |
本部長 |
「報告書だからといって、難しい言葉を使わんでもよいのだ。一度読んでわかる文章を書くのがサービスというもんだ。もうひとつの間違いはどこかわかるか? ウスイ主任」 |
ウスイ |
「『充分』の『充』が数字の『十』という所でしょうか…」 |
本部長 |
「そうだ。ねねちゃんは、どっちでもいいじゃん! という顔をしてるな」 |
ねね |
「いえ…ってゆーか、『充実』のイメージがあって『充』の方が数字の『十』より、すんごい注意してね! ってニュアンスがあるような気がシマス」 |
ウスイ |
「たしかに『充分』の方が強いというか、『十分』とは違うぞ、わざと『充分』という字を使ってるんだぞ、という“わざわざ感”があります。『充分』は当て字ですか?」 |
課長 |
「そうだね。作家では使い分けている人がよくいるけど、新聞とかでは『十分』がほとんどだ。「十分」を強調する「十二分」の場合は、「充二分」と書かないから納得がいきやすいかな」 |
ねね |
「でも〜時間の『十分』と紛らわしくないデスか? 料理のレシピで『十分煮る』とかいうときに、時間で『十分』なのか、味がよくしみるまで『十分』煮るのか、一度読んだだけではわかりませんヨ」 |