みぢかな日本語

●Vol.2
大活躍!−国語辞典・辞書に迫る−
「ATOK.com杯争奪 自分で作ろう国語辞典」
コンテスト 結果発表!

みなさま、投稿ありがとうございました。
応募総数が200を越え、どれもなかなかの力作でした。
そんな中、矢澤先生の視点で三作品を選んでいただきました。
以下、矢澤先生ご自身からの総評と入賞作品の発表です。

総評:
評価の基準は、現在使われている「クール」の用法をちゃんと網羅しているか(抜けはないか)です。もしかしたら、おもしろおかしい語釈の入賞を期待していたかもしれませんが(狙ってしまった方、ごめんなさい)、国語辞書は、
  • ちゃんと用例をカバーしているか
  • 語釈が簡潔明瞭であるか
  • 用例が洗練されているか
などの点がしっかりしていなくてはなりません。
特に自分がどう使うかだけでなく、広く観察して、どのような場面でどのような意味として使われているかをちゃんと捉えているかが重要です。
さて、出題の時点で
  • 「クールな色合い」といった用例をカバーする「涼しさ」系
  • 「事態をクールに受け止める」のような「冷静」系
  • 俗語としての「かっこいい・素敵」系
の3つのブランチをたてて欲しいと考えておりました。いずれの入賞作も「涼しさ」系が欠けていますが、それでも的確な語釈や用例はプロ顔負けです。
グランプリ
【語釈】
英語coolより転じる。
(1)冷静にふるまう様
(2)(「快適な涼しさであること」ないし米語俗語としての「素敵な、いかす」の意から転じて)他人が行う、自分の興味をひき、気持ちよく感じさせるふるまい。
(3) 素敵な、いかす
【言い換え語】
(1)冷静
(2)たのしい;おもしろい;興味深い;
(3)カッコいい
【用例】
(1)彼はどんなお客にもクールに対応している。
(2)あのショーはクールだった。
(3)「あのガード下のポップアート、なかなか−ね。」
コメント:
言葉がさまざまな状況で使われることを考慮した、幅広い解釈が魅力です。
また「かっこいい。素敵」系が俗語・若者言葉であることを示していることが一歩抜き出ていました。
準グランプリ
【語釈】
(1)冷たい、冷淡なこと。転じて物事に動じない様
(2)切れ味が鋭く最先端なこと、もの
【言い換え語】
(1)冷静である
(2)カッコイイ、最先端
【用例】
「私の彼って−なのよねぇ。そこがステキ」
(2)アメリカでは日本の漫画は「−」だと言われる。
コメント:
「語釈が簡潔明瞭であるか」という点で非常に優れています。
準グランプリ
【語釈】
(1)人とは違ったファッション・思想を自分から情報発信する様を他人が評価する形容動詞。しかし少々ずれているところがあり皮肉った表現にも使う。
(2)物事の判断が冷静で割り切った様。
【言い換え語】
(1)斬新だ。
(2)冷静。淡泊。
【用例】
(1)(人のファッション・思想を表現された後で)君のファッションは−だね。
(2)仕事は、−に考えていかないと辛くなるよ。
コメント:
「語釈が簡潔明瞭であるか」という点では、長い解釈文を好む他社の辞書で喜ばれそうです。ただ内容は「もっともだ」と感じるところもあり、準グランプリといたしました。

以上です。投稿していただいた方にはほんとう感謝しております。
ありがとうございました。
今後もこういった企画を続けてまいりますので、是非ともご協力ください。

 次回は「今年こそはヒットを出す!ひと言が1億につながる!─ネーミングの日本語─」Part 1お届けします。

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update:2004.02.20